デザインとアートの違い、わかりますか?

しおかぜレモンのまちを始める前、わたしは長くデザイナーをしていました(今もですが)。プロダクトデザイナーとしても仕事をすることがあり、図面を引いたり、量産のための試作を重ねたり。今の貝殻の家づくりとは、一見ずいぶん違う世界に見えるかもしれません。

でも実際に手を動かしてみると、根っこの部分は驚くほど変わっていない氣がしています。「どうすればこの形が崩れずに立つか」「どの角度から見ても美しく見えるか」。そうした問いは、デザイナー時代も今も、ずっと同じです。

大きく違うのは、正解の有無だと思います。デザイナー時代は、機能や量産のしやすさという、ある程度はっきりした正解に向かって形を詰めていく仕事でした。今の作品づくりには、そうした明確な正解がありません。

正解がないというのは、最初はとても心もとないものでした。でも今は、その心もとなさごと楽しめるようになってきた氣がしています。貝殻の形は、ひとつとして同じものがありません。だからこそ、毎回はじめましてのつもりで向き合う必要があります。

デザイナー時代に培った「構造として破綻しないための視点」は、今もとても役に立っています。丸い土台にすること、重心を低く保つこと。可愛らしく見える作品ほど、実は地味な構造の工夫に支えられています。

もし今、何かを作りたいけれど「センスがないから」と迷っている方がいらっしゃったら、お伝えしたいことがあります。センスというのは、実は経験の蓄積でしかない氣がしています。うまくいかなかった試作の数だけ、次の一手が見えてくるものです。

正解のなかった世界から、正解のない世界へ。遠回りに見えて、実はまっすぐな道だったのかもしれないと、このごろ思うようになりました。

店頭では、そんな試行錯誤の積み重ねから生まれた作品たちを、日々並べています。良ければ、その痕跡も一緒に眺めていただけたらうれしいです。

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