誰にも見せていない、庭のとんぼの話
お店の庭に、とんぼの姿を見かけるようになりました。
オニヤンマ、ギンヤンマもたまに見かけます。
風の強い日は、電線や物干し竿の上で、じっと風に耐えているような姿をよく見ます。写真に撮ろうとすると、たいてい氣づかれて逃げてしまいます。
この景色を、誰かに見せたわけではありません。撮れなかった写真は、SNSにも載せられません。それでも、庭でとんぼを見かけた、というその事実だけで、十分に満たされる氣持ちがあります。
誰かに見せて初めて価値が生まれる、というものばかりではないのだと思います。自分だけが知っている景色、自分だけが感じた氣持ちにも、同じくらいの重みがあるのではないかと思います。
繊細な方は、感じたことを誰かと分かち合いたい氣持ちと、そっと自分の中にしまっておきたい氣持ちの、両方を持っているのではないかと思います。どちらを選んでも、間違いではないと思います。
アトリエの猫も、とんぼを氣にする様子はありません。庭に来る小さな来客に氣づいているのは、いまのところ、わたしだけのようです。
誰にも見せない景色を、今日はもう少しだけ眺めていようと思います。