「良いもの」に囲まれているのに、なぜか心が乾いているあなたへ
お店にあるカップを手に取ったとき、なぜか心がふっと穏やかになることがあります。形も色も普通なのに、手の中に収まった瞬間に伝わってくる「何か」。私はそれを、スペックには書けない「やわらかい部分」と呼んでいます。
デザイナーとして20年働いてきた私は、かつて「正解」を求めて効率を追求していました。でも、パートナーを失い、一人で貝殻を拾い始めたとき、別の真実に触れたのです。
シーグラスには、私たちが知らない何十年という波の歴史が刻まれています。流木はどこかの森から川を下り、潮に揉まれてここへ辿り着きました。素材自体がすでに、豊かな物語を連れてやってくるのです。
私の仕事は、その物語を消すことではなく、ただ感じられる形を与えることです。誰かのことを想い、完全にそこにいて作ったものには、目に見えない「注意の痕跡」が宿ります。
効率よく作られたものに囲まれていると、私たちの心は知らず知らずのうちに乾いてしまいます。
いま、あなたの周りにあるもので、触れると「やわらかい」と感じるものは何ですか?
それは、誰かがあなたを想って選んだものかもしれないし、あなたが自分を癒やすために拾ってきた石かもしれません。その「やわらかさ」に気づくとき、あなたの日常は静かな聖域に変わります。