大切なものは、鳥を持つようにやさしく

失いたくないものほど、私たちは強く握りしめてしまいます。人間関係、仕事の成果、過ぎ去った日々の記憶。けれど、強く握れば握るほど、手の中にあるものは形を歪め、苦しくなって逃げ出したくなってしまう。守ろうとする力が、皮肉にも、一番大切にしたいものを傷つけていることがあります。

メモリー・レーンに住むナツミの家の周りには、誰かの大切な記憶がふわふわと浮かんでいます。彼女は言います。
「大切なものを持ち続けるには、鳥を持つように、やさしく。行けるくらいの力で、でも選んで」。

私も、愛する人を亡くしたあの日、手のひらをぎゅっと握りしめていました。失うことが怖くて、記憶の断片をすべて自分のものにしておきたかった。でも、拾った貝殻に触れているうちに気づいたのです。手放すことと、忘れることは違うのだと。

所有することではなく、ただ共にあること。

いま、あなたが「失うのが怖くて」指に力を込めているものは何ですか?

ほんの少しだけ、指の力を抜いてみてください。そのやさしい隙間にこそ、本当に大切なものの輝きが宿り続けます。

海は、ここからは見えません。でも、あります。
あなたの中にも、静かな海が、必ずあります。

この物語を、あなたに贈ります。

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